2012年03月13日

八日目の蝉 角田光代  読書感想



 八日目の蝉
 角田光代
 中公文庫


 205425.jpg


 テレビ版、映画版と鑑賞してみて、原作も読みたくなりました
 読まないといけない気分になってました

 原作を読んでみて、どちらも希和子と薫が引き離されるときの希和子の叫ぶ言葉を、いかに演出するかに重点を置いた展開になっているように感じました

 あの場面でのあの言葉は作者からのメッセージ・・・母親に至った者だけが発するものとして聞こえる

 希和子は、そういう者に至っていたから・・・どの女性も母親で、いろんな形の女性像を描くことで、それぞれの苦悩みたいなもの、思惑、つきまとう理不尽さや不安定さ・・・多彩な情景を描きたかった

 原作を読んでみて、改めてそんな風に感じたりしてました

 テレビ版、映画版のそれぞれの良さも再認識

 テレビ版は、時間枠がたっぷりあるので、じっくり原作をなぞっていることが分かりました
 原作ではセリフもなく描写でしか登場しなかった小豆島で希和子に思いを寄せる男に、重要なシーン −あの希和子の言葉− を託しています

 原作を読んで、希和子と薫の行き違いのシーンが鮮明に蘇ってきました
 あれは、作者も活字にした余韻だったんですね


 そして、映画版、希和子役の女優の切迫した演技がやはり印象深い
 原作の希和子がスクリーンに居ると思いますね

 こちらでは、あの言葉はストレートに描かれていました
 薫に重点を置いた演出で、同じ境遇になってしまう薫が、希和子とは同じ母親感を持ちながらも、希和子と異なる選択をし、自信を獲得していく件はなかなか良かった


 そしてテレビ版、映画版共通なのは、やはり舞台となる小豆島の風土に癒される希和子と薫の生活感です

 島四国の巡礼地を訪ねるシーンは、映像として圧巻です、ふたりが情を深めていく過程の裏付けとして説得力は十分でした

 寒霞渓からの眺めは、誰もが訪ねたくなるほど秀逸

 テレビ版で描かれていた、薫を置いて希和子だけが急斜面を登っていく札所のシーンは印象的でした

 薫が視界から見えなくなってからの、少し登っては薫を呼んで返事で存在を確認するシーンは、観る者の記憶に焼き付いて離れない




 原作を読んで、なんだか納得できたというか、満足しました

 やっぱり主役は薫でした

 あの大切な希和子の叫び、それをいかに表すか、原作では小豆島の「匂い」に触れた薫が記憶を取り戻すことで薫自身の言葉で復元されていました

 曖昧な希和子との最後の記憶、東京にいる間はまったく記憶は覚醒しない

 そんな薫が不安を抱きながら、あの島を再訪することで、徐々に幼い薫に刷り込まれた小豆島の方言が蘇ってきて・・・ようやく希和子の叫びの記憶まで取り戻す

 自分にはふたりの母親がいることを自覚する

 なんという余韻の残し方でしょう、原作の構成にやられてしまいました

 活字の力を改めて実感した小説でした




 映画賞受賞によって、リバイバル上映があるようです

 劇場で観たいような気もしていて、年度末の多忙な時期ですが、タイミングが合えば行くようでしょうか?

 小豆島の風景、光に満ちた懐かしい風景がそこにあるでしょうから


 さてさてどうしたもんか





posted by 雪になあれ at 21:06| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 角田光代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月15日

まどろむ夜のUFO



 まどろむ夜のUFO
 角田光代

ufo.jpg まだ表題作を読んだだけですが、記憶が新鮮なうちに感想を。

 これも不思議な作品でした。
 『』を取り巻く登場人物が、皆浮遊してるような雰囲気、存在感(現実感)がない。

 しっかりと『』だけは現実を全うしてるのに周囲の彼らと会話してるうちに危うい世界へ行ったり来たり。
 
 物語前半は退屈するような長回しですが、田舎から送られてくる『』が出てくるあたりから一気に読ませます。

 存在感がないというか現実感がないというか、3人の男たちが現実にこの世界に居ることを感じさせてくれるのは、小道具としての『ジャム』と『』から連想される『甘さ』。

 弟タカシが作るジャムには現実感があるし、恭一と食べる桃から滴る甘い汁はさらにインパクトがある。確か『』に話しかける『男』の口臭も甘い砂糖のような臭いがすると書かれていた。

 『人の息遣いのしない』街を通って『まったく来たことのない場所』にある工事中のビルの屋上で、恭一の『茶色い草』に火をつけて吸い込むと『嫌な味』がする『私』。
 『甘さ』が現実を象徴しているのに。

 人の気配のない知らない街、暗い階段を昇りきった屋上・・・、閉塞感は充分です、奥へ奥へと誘われて現実感のない『』を感じる『』と「夏休みが終わるから帰る」とあっさり現実を語る『』。


 しっかり読まされました、『学校の青空』と『キッドナップ・ツアー』よりも物語の完成度という観点では上だと思う。
 角田光代さんも(『も』、というのは『小川洋子さんは凄い、角田光代さんも凄い』の意)凄い、まだ2話あるから楽しんで読もう。



 今日は加須市から岩槻市、夕方会社戻って9時くらいまで残業、一日車で移動してたのでウォーキングはなしでした。
 そんで3食食ってたんでは・・・。



posted by 雪になあれ at 01:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 角田光代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月11日

キッドナップ・ツア−



 キッドナップ・ツアー
 角田光代

kidnap.jpg 『学校の青空』にインパクト受けて、続いて読んでみる。
 直木賞受賞作『対岸の彼女』が本屋に見あたらないので、文芸賞受賞してる本選んでみました。

 『夏休み』、『ユウカイ』というキーワードに惹かれてこの本を手に。
 似通った父と娘の珍道中とでも言うのか、父娘ともどこか劣等感を持っていたり、気持ちを言葉で伝えられなかったり。

 どこか懐かしくもの悲しい、夏休みや海や山への誰でも持ってる旅情があったり、読んでる間、ずっとそんな気持ちでいられる本でした。

 個人的に物足りなかったのは、お父さんとお母さんの取引の内容が明かされなかったこと。 たんたんと父娘の道中が描かれて、その『取引』がアクセントになっていた。

 自分なりに想像してたので、書き手の解釈が読みたかったかな、と。
 読み手の想像に任せる方が、効果ありってことなのかな・・・


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 今日は熊谷スポーツ文化公園
 やや風はあったけど暖かい、花粉もそれほどでもなさそう。
 ドーム側駐車場周辺には花壇に色とりどりの花が植えられてた。

 軽くランニングしてたら気候の良さに後押しされて結構走りました。
 ラン7km、ウォーク3kmくらいか。



↓いつもの定点観測↓
060311001.jpg

060311002.jpg



posted by 雪になあれ at 23:08| Comment(1) | TrackBack(1) | 角田光代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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