2013年11月04日

かけら 青山七恵 読書感想



 さりげない文章で綴る作者のいつもの文体でした

 三作品

 表題作「かけら」、「欅の部屋」、「山猫」

 どの作品も主人公の少しのこだわりで生活の一面を描きます

 こういう些細な日常にわずかなこだわりを割り込ませて、主人公の気持ちを描写する文章は、この作者の真骨頂のような気がします

 どの話も自分に置き換えられる身近なストーリーで、ささやかに印象が残る

 何となくひっかかる自分への違和感、身内への特別な感情、恋愛の持つ不合理な結末

 表現が難しいけれども、誰もが持っている、良し悪しの付けられない自分の中の意識

 そんな曖昧な自分の中の葛藤を、こうも文章(小説)に出来るというところが作者の凄さのような気がします

 
 そんな作品群の中でも、自分が一番印象に残ったのは、山猫でした

 終わり方も他の2作品とは異なっていました

 些細な夫婦の日常は、一人の少女が現れても続き、去っても続いていく

 夫婦と少女のその後があっさりとラストに記されていて、作者得意の視点の入れ替えがあります

 どこまでもさりげなく綴る作風は、いつまでも余韻が残る

 そこがこの作者の魅力だと改めて思いました


 新潮社「かけら」
 http://www.shinchosha.co.jp/book/138841/
 



posted by 雪になあれ at 20:59| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 青山七恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月11日

窓の灯 青山七恵 読書感想



 とにかく文章が上手いと思った

 無駄のない洗練された言葉の連続

 飾らない(気取らない)言葉は作者の気負う気持ちを抑え、淡々とした小説に仕上げている

 読み易く、場面場面が鮮明に浮かんでくる
 
 この作品がデビュー作と考えると、才能に溢れた書き手だと感心する

 主人公まりもは、ミカド姉さんの容姿や言葉を形容することで自身の気持ちの移り変わりを表現する
 
 いつも気にしている何通りかの窓からの眺めや人の気配も活用して、自分のわだかまりや不甲斐なさみたいな感情を表現する

 とても巧みだと思った、気持ちを直接活字にするより、間違いなく印象深くなる

 場面展開もさりげなく、視界に入る平凡な小道具やその臭い、人々の喧噪を利用して、次の展開に誘われていることに気づく

 周囲の人々の平凡な日常を斜に構えた視線で形容することも、ミカド姉さんの女の部分を褒めたり、恨んだりする件は、まりもの複雑な心理を浮かび上がらせている

 ミカド姉さんと男達との駆け引きは、まりもが姉さんに絡みつく代理として読める

 束縛を感じさせない姉さんへの憧れ、姉さんを通してまりもは経験を積み上げているよう

 自分には足りないが、自分が覗いている窓をきっかけに

 後は自分の勇気だけ、いつでも準備は出来ている

 最後に実際に声にしたまりもは一歩前に進んだことを示唆したもの

 今のまりもの境遇を、窓の灯の先に向かうことを暗示しながら終わる

 ラストに向かうテンポの良い文章も印象的でした


 この作者の本は2冊目です

 初めて読んだ「ひとり日和」の感想を眺めたら、同じことを感じていて驚いた

 この作家の文章を読んでいると、あの向田邦子さんのすっきりした文章を思い出す

 そして、この作品も賞を受賞していることを知りました

 芥川賞受賞から、ずっと活躍されていると思うので、他の作品も読んでみたくなった



posted by 雪になあれ at 21:42| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 青山七恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月28日

ひとり日和 青山七恵



 ひとり日和
 青山七恵著 河出書房新社2007年02月

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 辛口の石原慎太郎さんが高評価されてる知らせを聞いて、ぜひ読んでみたくなった本。

 単行本ではなく、全文掲載された雑誌『文藝春秋』で読んだ。
 数日前に読んだので記憶が薄くなってきてるけど感想をメモ。

 文章が巧みだと思った、そして登場人物の設定がいい、一人一人よく練りこんでいると感じた。

 それぞれに些細なこだわりがあり、善意と悪意を持たせ、少なからず希望や絶望もある。

 そんな登場人物たちが、少しずつ絡みながら四季を動かしていく手法、気持ちまで動かされた感覚でした。

 文章の質感で読まされていると感じていました、実はそれが心地いい小説だと思う。

 そして、こういう凄い賞の受賞作品にありがちな退屈感もあるにはあったけど、その退屈感を払拭していたのは知寿のちょっとした仕種や屈託ない文句だった。

 本筋とは関係なさそうな知寿の体の動き、視点、周囲への批判、自虐的な感想、そんなモノたちが小説全体を支えていた。
 こういう技巧が芥川賞を受賞させる所以だとも思う。

 自分が一番良かったのは、そんな知寿の視線から書かれた心地いい文章たちでした。
 
 物語の大半は、その『駅』を知寿とおばあさんが住む家から見ていて、物語の最後にその『駅』からの視線に変えてくる手法です。

 この点は石原氏も指摘されていて、読者が心動かされる重要な箇所なんだと思いました。

 その転換には知寿の気持ちが織り込まれていて、自然と主人公が前に進みだす意思が強調されていた。

 その時の小道具も抜群です、発車の合図のベルアンテナ、笑う女の子、その少女のポニーテールの髪、青いスカート、そしてスピードを緩めない電車・・・

 
 このキーとなっている『駅』を使った視点を変える文章を読んでいて、向田邦子の『だらだら坂』という作品を思い出した。
 タイトルがあやふやですが・・・

 その話は確かこんな感じでした。
 男が向かう愛人の家は坂道を登りきったところにある、あかぎれのような細い目をした女が待っている。

 登り始めるときに見る坂道が心地よく感じる。

 その女は主体性がなくて男の思うまま、それが女が少しずつ変化し主張を持つようになる、あかぎれのような目にシャドウを入れるようになり男の好みの女ではなくなっていく。

 少しずつ男は足が遠くなり、ある日、その坂道を登る気力がなくなってタクシーで乗り付ける。
 タクシーから降りるとこれまで見たことのない坂道(下り坂)がそこにある。
 女のアパートには寄らず、その坂道を歩いて下りて行く・・・



 向田邦子さんの作品は好んで読んだ時期があり、今回『ひとり日和』を読んで重なってしまいました。

 タイトルの付け方もいい感じで好印象でした、面白かった。

posted by 雪になあれ at 23:54| 埼玉 ☀| Comment(5) | TrackBack(5) | 青山七恵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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