2007年04月22日

一瞬の風になれ



 一瞬の風になれ 佐藤多佳子
 第一部 イチニツイテ 2006年8月25日
 第二部 ヨウイ 2006年9月21日
 第三部 ドン 2006年10月24日

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 読破するのに1ヶ月かかりました。
 読んでいる最中に本屋大賞受賞の知らせ、暗示にかけられたかもしれないが、確かに面白かった。

 読み始めるときは、三冊は長いかな、なんて思っていたのに読み終わると、その先まで知りたくなった。

 読者は皆そう思ってるんじゃないか、そしてこの長丁場の頁を著者は楽しみながら書いたのではないかと想像しました。

 謝辞の中で『未経験の私』としていて、陸上についてよく取材して書き上げた著者の姿勢が伺えました。

 自分もよく走っている熊谷スポーツ文化公園陸上競技場、南関東大会の千葉総合スポーツセンター陸上競技場、著者は足を運んでトラックを歩いたに違いない。

 トラックから見える観客席、仰ぎ見える青空の様子、吹く風の具合・・・著者自身が感じて活字に置き換えていった・・・

 そして肝心のトラック、観客席から見えるトラックの色、スタートラインから見えるトラックのラインと色具合、ランナーの視界・・・どれもこれも著者は自身の目で確認したに違いない。

 新二や連の気持ちの描写と絡めて、書き込まれた赤いトラックは読んでいて印象に残った。
 シンプルに書き上げてるように読めるけれども、著者の深い気持ちが伝わってきた。


 この本は単なるサクセスストーリーと淡い青春小説を掛け合せて読者の機嫌をとった作品と評価する人もいるかもしれないが、自分はいい意味で評価したいと思う。

 本屋大賞の選評を読んでいると書店員さんが純粋に褒め上げていて、素直にうなづけました。

 読者を飽きさせないように登場人物に工夫が見受けられました、それと印象にあるのは新二のお母さんです。

 息子たちの活躍に一喜一憂する母親、どんな事態でも息子たちの食事の心配をする母親・・・がいました。

 そして、新二の友人たちの食事を急遽作ることになるお母さんの様子、これには感心しました。

 息子からの急な要請に困りながらも嬉しさを垣間見せる母親像・・・あれは、この国の母親の共通点でしょう。


 そしてこれも感想に書き加えたい、谷口との気持ち。
 能書きを書いても仕方ないけど、これもアクセントになっていてよかった・・・青春小説だからこれは必須ですかね。


 終章の冒頭、ホテルの窓からの景色を描写するくだりがある、自分にはこれが著者自身の感慨のように読めて仕方ない。

 感慨というのは、この小説を書き上げた達成感です。
 夜の景色を淡々と書き綴り、『静かな気持ちだった。』からの2行に著者の気持ちが織り込まれていると思った。

 身体は疲れ果てているのに、いくら横になっても眠ることが出来ず、起き出して外を眺めてしまう・・・そんな著者の高ぶる気持ちがあったんでしょう、書き上げた時に。
 それほど手応えがあったんだと思う。
 
 続編を読みたくなったのは自分だけではないと思う。
 それほど新二や連、桃内、根岸、谷口、みっちゃん・・・登場人物に感情移入出来たということ。

 読んでいて楽しい、素直になれる小説、そんないい本でした。
 これも映画化されるのか、難しいだろうなこれは。

posted by 雪になあれ at 02:04| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 佐藤多佳子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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