2007年07月25日

GO 金城一紀



 GO
 金城一紀

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 本屋で平積みになっていたこの本、ずっと気になっていました。

 読んでみると、3つの話が印象に残った、どれも何か境界線の上をさまよっているような雰囲気でした。

 ひとつは紹介文どおりストレートに『恋愛』でしょう、そして加藤や正一や元秀との『友情』、極めつけで『親父』。

 どれも危うさを感じながら読まなくてはいけないのは、杉原が在日韓国人だという理由からで、その部分が著者が書こうとした目的なんだと思えた。

 著者は自称コリアンジャパニーズとしていて、小説の中の杉原を読む限り、自叙伝だと考えるのが自然だと思う。

 小説は非常に楽しい、これはシリアスにならないように苦心した著者の思惑どおりに仕上がっているから・・・

 日本人になりきれない葛藤から、孤独であるのに加藤のような友人がいたりする、正一と元秀という対照的な同胞の友人もいて、杉原という人物像がうまい具合に出来上がっていく。

 冒頭で近づいてきた桜井との恋愛は非常に不自然で、どうしても違和感が払拭できなかったのに、その謎解きを最後の最後に持ってきていました。

 親父との最後の戦い、これがこの小説のクライマックス、自分はそう感じた、ここの描写は非常に面白い。
 どうしても越えられなかった親父さんです。

 最後に桜井と会うシーンを描くには、ここで親父に勝ってはいけない、この敗戦(1敗)がこの小説を淡い恋愛小説として仕上げていた。

 著者のこだわり(在日であることへのこだわり)は、名前の使い方にもあったように思う、ホテルにチェックインするときまで、桜井の名前は明かさなかった。
 恋人なのにいつまでも苗字だけで過ごしていたのには、そんなこだわりを描きたかったから・・・

 杉原にいたっては、自分の読み落としがなければ、名前は出てこなかったような気がする。

 そして何と言っても『GO』というタイトルにこめられているもの、編集者の意向で受けやすいものにした・・・なんて野暮なことは想像したくない。

 著者が日本にいながら『GO』とした気持ち、自叙伝として書いた小説に持ってきたタイトル、そこを想像すればするほどこの小説の良さを改めて味わえた。

 安直に桜井とよりを戻したら、この小説はつまらなくなると思っていたのに、そうは感じさせなかった著者の力量に感心しました。

posted by 雪になあれ at 00:49| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 金城一紀 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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