2007年12月26日

風に舞いあがるビニールシート 森絵都



 風に舞いあがるビニールシート
 森絵都
 文芸春秋 (ISBN:4-16-324920-6)
 発行年月 2006年05月

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 正直、タイトルから想像していた世界観とは大きくかけ離れていて、その重厚さに面食らいました。

 「ビニールシート」から来るイメージは、運動会やハイキングといったような爽快な場面、まさかこんな話の象徴として使うとは想像できませんでした。

 このビニールシートは鮮やかなラストシーンに結びつけられていて、読者としてはまんまと謀られたのに、里佳が最後にフィールドに向かう決意をする気持ちに同化出来たような気にさせられました。


 表題作に限らず6編とも、真摯な主人公の気持ちが主題になっていて、彼らの意志の強さに揺さぶられます。
 共通しているのは、主人公が「決意」するための動機を丁寧に書き込んでいる点、凡人(常人)には理解できない世間ズレした行動を肯定(理解)させるために・・・

 そんな著者の書く努力が伝わってきて、1話1話に納得がいく。
 渾身の力が込められた印象のある、これら6作品は、2005年3月号から2ヶ月おきに翌2006年1月号まで続いたようです。

 森絵都作品は、自分は「カラフル」しか読んでいなかったこと、児童文学からスタートしたこと・・・そんな先入観があったせいか、なぜこんな作品群を著したのか非常に興味深かった。

 恋愛小説的な要素もあるがそれだけではなく、安直な社会風刺や反戦?、理不尽さへのモヤモヤ解消?、どれにも上手くあてはまらない・・・

 定義できない「正義」だったとしても、少なくとも声に出して誰かに伝えたい、そんな著者の気持ちを感じました。

 非常に楽しみにしていた「風に舞いあがるビニールシート」、もっと童話的で絵画的な小説を勝手に連想していたので、正直驚きました。

 著者に失礼でした、こんな作品を書くとは思っていなかった、脱帽でした。
 著者の他の作品をもう少し読んでから、この本の気持ちを考え直してみたい、著者がこの本を書いた気持ちに応えるにはそのぐらいしないと失礼かもしれない。

posted by 雪になあれ at 00:40| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 森絵都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月30日

カラフル 森絵都



 カラフル
 森絵都
 文芸春秋 (ISBN:978-4-16-774101-3)
 発行年月 2007年09月

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 読んでからしばらく経ってしまい、記憶が怪しくなってるけど、初めて読んだ作家なので感想を記録。

 風に舞いあがるビニールシートで直木賞を受賞したのを知っていたのでいつか読みたいと思っていた。
 直木賞受賞作のタイトルが実にいい。

 この『カラフル』、冒頭からとても面白い、天使の名前がふざけてるのに意味がありそうで、著者の仕掛けが隠れていそう。

 この天使と真のやりとりが実によかった。
 真に住みつく抽選に当たった魂の溌剌とした性格、読む推進力になった。

 実は真自身が亡くなる要因になった、取り巻く家族や友人たちとのとの絡み、少しずつ解いていくような感覚のストーリー展開もよかった。

 真が亡くならなければならない理由を丁寧に積み上げながら、登場人物の真への気持ちを描いていた。

 この作家の読ませる力を感じた。
 ただ、読者の多くがそうだと思うが、早い段階で用意された結末が想像できてしまうのはどうかと思った。

 自分は『もうひとひねり』あると期待しながら読んでいたので、予定どおりの結末にしりすぼみとなってしまった。

 自分は、無くなる前の真と抽選に当たった真の違いを、最後に説いてくれることを期待していたので・・・
 そこだけが残念、この小説にはその説明は必要だったような気がして・・・

 しかし話の持たせ方は上手いと感じた、他の作品にも期待を持ちました。

 もうひとつ良かったのは、タイトル。
 この話を『カラフル』と名付ける感覚が素晴らしい、この表題には色んな想いが想像できる。

 いつか直木賞受賞作を手にとってみたい。

 
posted by 雪になあれ at 23:28| 埼玉 ☔| Comment(1) | TrackBack(1) | 森絵都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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