2008年06月25日

科学の扉をノックする 小川洋子



 科学の扉をノックする
 小川洋子
 集英社 (ISBN:978-4-08-781339-5)
 発行年月 2008年04月

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 正直なところ・・・この本を読み切った人は「小川洋子ファン」に違いない、まして買って読んだ人は折り紙付きでしょう。

 図書館から借りてきて、改めて「指のない手」でノックしてるこの本の表紙を見て笑えた。
 この絵は南伸坊さんなんですね。

 構成は、いろいろな科学の分野の第一人者に取材し、科学の事実に小川洋子さん得意の感嘆コメントを添えたエッセイ+対談集です。

 実際は、6人の科学者と何故か阪神タイガースのコーチへの取材記事・・・あとがきに書かれていますが、編集者の薦めで始まった「科学の扉」をノックしまくり「小川さんの妄想」を叶える企画らしい。

 人選は小川洋子さんがされたようで、「それならやっぱり締めは阪神タイガースや」だって・・・ここも笑える。

 ホントに小川洋子さんから「阪神」は切り離せない、です。

 冒頭にも書きましたが、正直この本の滑り出しは退屈だと思う。
 これでは小川洋子活字中毒者でなければ、読み進めないでしょう。

 この時期、あまり小説を書かないわけですから、ファンとしては仕方なく読んでるわけで。
 それでも5話「粘菌」の話あたりから、「らしさ」が出てきて著者が乗ってきてる雰囲気が分かる。

 そして第6話、もう著者は止まりません、全開でした。
 「遺体科学」・・・遺体を無制限・無目的に収集する、これでは小川洋子さんを歓ばせてしまうって。

 「パンダの指が7本ある」から始まって、「イルカを煮る」だの、「象を土に埋めて骨にする」だの、目がらんらんと輝いてる姿が思い浮かびそう。

 文章が他の章に比べると踊ってました、「死」に通じる「科学」の世界では仕方ないですかね。

 取材した時期について、記述はありませんでしたが、2007年なんでしょうか?もしくは2006年か
 5月から始めて昨年暮れあたりまで、毎月取材したのかも。
 あとがきは2008年早春となっています。

【目次】
  • 1章 渡部潤一と国立天文台にて—宇宙を知ることは自分を知ること
  • 渡部潤一のほーむぺーじ
  • 2章 堀秀道と鉱物科学研究所にて—鉱物は大地の芸術家
  • 3章 村上和雄と山の上のホテルにて—命の源“サムシング・グレート”
  • 4章 古宮聰とスプリングエイトにて—微小な世界を映し出す巨大な目
  • 5章 竹内郁夫と竹内邸にて—人間味あふれる愛すべき生物、粘菌
  • 6章 遠藤秀紀と国立科学博物館分館にて—平等に生命をいとおしむ学問“遺体科学”
  • 7章 続木敏之と甲子園球場にて—肉体と感覚、この矛盾に挑む

  • posted by 雪になあれ at 23:07| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(2) | エッセイ−小川洋子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2007年09月24日

    博士の本棚 小川洋子



     博士の本棚
     小川洋子著
     新潮社 (ISBN:978-4-10-401305-0)
     発行年月 2007年07月25日

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     読んだ印象は、これまでのエッセイと構成が違うなあと思った。
     明らかにこれまでのエッセイとはトーンが違う、原稿が進まない様子を嘆いていたり、これまで息子さんをハッキリ登場させるエッセイはあまりお目にかかったことがない気がする。

     それと芦屋での日常を披露していて興味深いです、それも地域で生活する様子を描いています。

     あの打出公園を愛犬ラブと散歩しながら訪ねる描写があります・・・阪神電鉄打出駅の踏切を渡ってすぐに見つかった・・・としていました。
     しかもあの公園が自宅から10分くらい・・・だなんて、まさに生活の場ですね、あの界隈が。

     1991年1月から2007年6月までのエッセイ集です、書き下ろし2編を加えて、あとがきが『2007年 梅雨のある日』とされていました。
     これは著者の作家としての履歴そのものです。

     編集者の意向で大きく4つのカテゴリーに再編されています。
     1 図書室の本棚  子供の本と外国文学
     2 博士の本棚   数式と数学の魅力
     3 ちょっと散歩へ 犬と野球と古い家
     4 書斎の本棚   物語と小説

     テーマを本棚としながら、3章はサブタイトルのとおり、愛犬ラブラドールと愛息との日常を描いています。
     この部分は編集者も『本棚』では括れなかったってことですね。

     自分としては、3章と4章が興味深かった。
     3章は芦屋での日常に触れています、息子さんが野球に興味を持ったこと(興味を持ってくれたこと)、愛犬ラブの気持ちを察することの出来る息子の感受性、これはやはり母親としてこの上ない喜び。

     4章では、『日記帳の贈り主』が秀逸。
     著者の最上のこだわり『日記』・・・自身も触発されて書き始めた日記の出所に行き当たった思い出話です。
     面白かった。

     この本を読んで、著者が感心する編集者の力を自分も感じました。
     16年もの長期にわたって著された小川洋子さんのエッセイを4つのカテゴリーに再編して、しかも時系列まで再構成してるのに、全体でひとつの物語のように読める、著者の気持ちの移り変わりや起伏などを感じることが出来る。

     1編1編のエッセイが極上だったとしても、編者のセンスに感心しないわけにはいかなかった。

     そして、この編集力のおかげで、常々感じていた『公人としての小川洋子さん』について思い当たった。
     今さらですが、著者は芥川賞作家で、既にその選考委員で、文学界の重鎮・・・私人ではなくて公人としての役割が大きい。

     当然そういう意識も作品に少なからず影響するだろうと想像します、公人としての仕事も多くなって思うように小説も書けないだろうし、息子さんは恐らく大学受験くらいの年頃だと思われる。

     今は公私ともに多忙な時期ですね、自分の気持ちのおもむくまま書けないだろうなあ、と。
     そうするとやはり小説は短編が多くなるでしょう、自分としては長編が好きなんですが・・・贅沢は言えない。

     夜明けの縁の何とか、っていう本を次は読んでみたい。
     まだまだ芦屋での日常が忙しい著者、『ミーナの行進』の次に書かれる著者の気持ちの核心に触れる(私人として書きたい)作品は、著者の気持ちの中・・・

     あとがき・・・著者の深い気持ちが読み取れます。
     自身の思い出の中にある『本』、それを読者に伝えようとしています。

     梅雨のある日、に結んだようです。
     海と山に挟まれた土地・・・芦屋の梅雨ってどんな雰囲気なんでしょうね。

     まとまらないけど、とりあえず感想はこのくらいで。



     もう少し、時間をかけて考えてみたかったけど、図書館から借りてるので返さないといけない。
     予約を入れて待ってる方がいるようなので、やはり人気作家ですね。

     とりあえず、エッセイを時系列にソートしてと・・・
     sort.html
     またいつか借りて、もう1回読んでみよう。(←買えって!)

    posted by 雪になあれ at 23:52| 埼玉 🌁| Comment(3) | TrackBack(3) | エッセイ−小川洋子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2007年07月22日

    私たちと芥川賞 川上弘美×小川洋子対談 文學界



     今日、図書館に借りていた本を返しに行くと、こんな雑誌がありました。

     文學界8月号に『私たちと芥川賞』という特集、川上弘美さんと小川洋子さんの対談が掲載されていました。

     最新号で貸出不可なのでパラパラ眺め始めたら、思わず読んでしまった。

     川上弘美さんの小説は読んだことがないが、対談で語られている言葉から想像すると小川洋子さんよりメリハリのある話を書いているような気がする。

     境界のハッキリしない小説が得意の小川作品とは違いそうです。
     作風の違いは出身大学の違いが反映してるような気がします、正確には文学部出身の小川さんに対して理学部出身の川上さんということでしょうか。

     理系の川上作品は答えをハッキリさせているような気がしました。
     自分も理系だったので何となくそう感じました。
     いずれにしても、両氏とも才媛ってことですね。


     対談は互いの芥川賞受賞の頃のエピソードを交えながら、選考する側の姿勢や選考される側の心理などを語り合っています。

     両氏のファンなら興味の湧くコメントが幾つかあると思います。

     小川洋子さんは海燕文學新人賞を受賞し、芥川賞を受賞した妊娠カレンダーまでの期間が一番小説を書いていたようなことをコメントされていました。

     当時は編集者からの依頼(催促)も書く動機になっていたが、そんながむしゃらな時期も作家には必要だと語っていたようです。

     小川洋子さんは4回芥川賞候補に挙がっていて、選考委員の中で一度も小川作品を選評しなかった委員がいたことを気にされていました。

     受賞したときでさえ、小川作品の評価をコメントしなかったようで、相当その選考委員は小川作品が気に入らなかったものと思われますね。

     実は、その話の後日談が非常に興味深かった。

     その時の選考委員(名を忘れてしまった)がフランスプロバンス地方の旅に一緒に招待されていたらしく、何故自分の作品の批評が一度もないのか聞いてみたかったが聞けなかったとしていました。

     この話、よぉーく考えてみよう、無いとは思いますが、ブラフマンの埋葬に何か影響するところがあるのかどうか、まあ考えすぎとは思いますけどね。

     この対談、結構ページ割いてました、読み方によっては女性同士の他愛のない世間話にも聞こえますが、ファンであれば面白いと思います。

     文學界 8月号
     http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/index.htm
     http://www.7andy.jp/magazine/detail?accd=T0154027

     川上弘美
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E4%B8%8A%E5%BC%98%E7%BE%8E

    posted by 雪になあれ at 21:42| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ−小川洋子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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