2008年04月16日

花まんま 朱川湊人



 花まんま
 朱川湊人
 文芸春秋 (ISBN:978-4-16-771202-0)
 発行年月 2008年04月

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 第133回直木賞受賞作、この本にはやられました。

 とにかくいいです、個人的には絶賛したい。
 何でしょうか、この感覚は。久しぶりの手応えに正直感動しています。

 短編6話で構成されていて、それぞれが独立した小品集ですが、同じ情感が漂っていました。
 幾らかの不可思議な世界観、気持ちを揺さぶる情感あふれる生活感を、幼少時の思い出を回顧する手法で描いていきます。

 第1話から圧倒されました、「トカビ」って何だ?と思っているうちにどんどん作者の術中にまんまとはまっていたんでしょうね。

 登場する子供たちの他愛のないセリフに油断していたか・・・、そしてそのセリフは関西弁で綴られていて、行間にくっきり浮かび上がっていたような感覚です。

 純粋で好奇で可愛らしい子供たちの言葉が、いつのまにか「哀感」や「怪訝」といったような感覚にすり替えられていって「神秘」的な雰囲気に辿り着かされるような・・・なんて表現したらいいか・・・「筆舌に尽くしがたい」っていうのはこういう事なのか?

 第1話「トカビの夜」、表題作「花まんま」、最終話「凍蝶」にはノックアウトです、特に「花まんま」は秀逸でした。

 文庫の解説は重松清さんが寄せていて、「静かなメロディーが聞こえてくる・・・いつまでも耳の奥に残っている。」と書き出しています。

 まったく飾り気のない素朴な文章で、最初は抑揚が感じられないのに、いつのまにか作者の「情」に包み込まれてしまう。

 時代を反映する「TV番組」や「お菓子」などの思い出の品をさりげなく小道具として使っていたり、大阪界隈の場末な街並みを登場させたりと、ストーリーの隙間をしっかりと埋めていました。

 そして芯にあるストーリーは、読者の思い出と情に訴える要素を兼ね備えているのに、あっさり「記憶(子供)」から「現在(大人)」に連れ戻され、いつまでも余韻に揺り動かされてしまう。

 この感覚は久しぶりです、読む価値が十分にある本です。
 この本の紹介には、ホラーの要素も記載されているので敬遠してしまう方もいるような気がする。

 もしそんなことが原因で、読まれないとしたら残念、たくさんの人に読んでもらいたいと思う。

 久しぶりにTBしたい、それほど素晴らしい本でした。

posted by 雪になあれ at 23:21| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 朱川湊人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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