2009年08月14日

終の住処 磯崎憲一郎



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 雑誌「文藝春秋」で読みました。
 選評や著者のインタビューも掲載されていて、日本を代表する企業で活躍している著者のしっかりしたコメントが印象的です。

 受賞作そのものは、たんたんと「彼」の生活が綴られていて、拍子抜けするほど平らな印象です。虚構の世界観の中にいるような気もするし、現実感たっぷりの話にも読めます。

 短文を積み重ねるこの書き方は、自分としては初めての感覚で、新鮮でした。その効果で、彼の「生涯」を読者は自然と噛みしめることが出来る。

 自分は、芥川賞を受賞する要素には、人の苦悩を間接的に描写して読者にそれをいかに察知させるか、そしてそんな苦悩の中にも希望がある・・・というイメージを持っているんですが、この作品の第一印象には肝心の希望が見えないような気がします。

 読後に著者のインタビューを読んでみて、この作品の絶望感は、絆の強い夫婦観を逆説的に書いているんだと思った。
 ただ自分には、著者のそんな意図は、この文章からは読み取る器量はないようです。

 作品の本意は理解できませんが、丁寧に短文を積み重ねながら印象的な言葉があちこちにあって、読む楽しさを味わった。
 満月、抗生物質、上棟式・・・虚構と現実を綱引きするような感覚は、こんな言葉たちが演出していたような気がします。

 「・・・の女」と浮気を繰り返しながら齢を重ねる「彼」は、「妻」を支点として生活を演じていて、「娘」も設けますが結局は「妻」との生涯を全うする・・・夫婦は結局はふたりで長い時間が夫婦を夫婦たらしめる。
 そんな真理を、「彼」がたんたんと過ごした生涯から読者に察知させるということなんでしょうか?
 この作家の次の作品も読んでみたい。

posted by 雪になあれ at 23:18| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(2) | 磯崎憲一郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「終の住処」過ぎた時間は一瞬に思えても、確実に時間は経過している
Excerpt: 「終の住処」★★★☆ 磯崎憲一郎著、142ページ、2009/7/25初版                          ★映画のブログ★                       ..
Weblog: soramove
Tracked: 2009-08-15 13:26

日常の
Excerpt: 小説「終の住処」を読みました。 著書は 磯崎 憲一郎 第141回芥川賞受賞作 やはり 純文学は難しいというか 全部 つかみ取れなかった感じがしますね 妻との生活、不倫、子ども・・・ 最後まで..
Weblog: 笑う社会人の生活
Tracked: 2012-05-19 19:04