2009年07月09日

風が強く吹いている 三浦しをん



 風が強く吹いている
 三浦しをん
 新潮文庫
 ISBN 978-4-10-116758-9
 2009/07/01

 116758.jpg

 この本を読み終わるのに相応しい場所はどこか考えてしまいました。今週も通勤電車で読んでいて、今朝、走と灰二とのタスキが繋がる場面に差し掛かりました。
 
 気に入ってしまった本は、落ち着いた場所で読後の感慨に浸りたいと思う質なので、読み終える場所探しをしてしまう・・・この本はそんな本でした。
 文句なしに良かった。

 この本の素晴らしさ、作者の書く意志、読者として感動する動機、これらすべては最相葉月さんの解説に書かれてました。
 それでも書きたくなります。

 印象的なのは、灰二が実現させた夢でした。
 同じ長屋に住んでいても思い思いの生活をしている10人を、仲間に格上げして、自分の夢に引き込んで実現させる。
 こんな痛快さはない。

 何気なく書かれているが、灰二の境遇と気持ちを考えると、その情熱に感動します。
 4年待ったこともそうだし、灰二の献身的なチーム作りにチームは団結していくことも。
 こんな展開は、好きな人は好きでしょうね。

 この本はファンタジーで、作者は「嘘」を読ませなければならないし、読者はその「嘘」を乗り越える必要がある。
 お互いにそんなことは百も承知なのに、涙をちびりそうになってしまう。
 
 やっぱり10人の境遇、苦悩、純粋な気持ちなんでしょう、そして主役の二人の情熱、目指しているモノがトドメで、グッときて応援してしまう・・・いつの間にか作者にコントロールされてしまう。
 
 限界の走りの中で、次々と10人に語らせるっていうのは、純粋に読まされますね。
 とにかく始まりから終わりまで、走ることと同じくらいそんな純粋さを貫き通した小説でした。
 そもそも10人で夢を追いかけるところから。

 最後に、
 自分は、この本を終始春を感じながら読んでいました。
 新春の箱根だから当たり前ですが、展開が「春」のイメージそのもの、春の持つ季節感をずっと感じていました。
 10人の初々しさや葉菜子の爽やかさ、風を感じる走りからも。

 話も春に始まり春に終わらせる、しかも3年後の春。
 夢のような1年から、3回分の箱根はどうなったのか。
 灰二と走はこれからも答えを探し続ける・・・なんという余韻でしょう、こうなると、読者は二人を探し続けることになってしまうんでしょうかね。

 とにかくこの本は、作者の渾身の一冊に違いない。

posted by 雪になあれ at 00:10| 埼玉 ☔| Comment(1) | TrackBack(2) | 三浦しをん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この本の面白さは自分にも分かりました
読む側の性別で感動する側面は違うような気もしますが、藍色さんが書いている『襷を繋ぐことでそれぞれの胸の内が掘り下げられ』ていく展開は皆共通に揺さぶられますね
駅伝がスタートしてからは走る息づかいが伝わってきて、いつのまにかあり得ない話が現実感を増してくるような・・・読んでいて自分も呼吸が荒くなってました
映画化もされるようですし、また楽しめそうです
それから、はたけなかさんの記事にTBコメントをいただき、ありがとうございました
自分が読む本は必ず読破されてますね、凄いです
このところ本を読まなくなってしまったので少し反省です、また寄らせていただきます

長文はコメント制限を受けます。
長時間待たされて睡眠不足と偏頭痛です。
各記事への短文コメントを強いられます。
なので、こちらで返信いたします。

気がつけば疾風怒涛のスピードで夢中で読んでいました。
一緒に走っているようなリアルな感じでした。
相手の気持ちに気づかなかった二人と自分の気持ちに気づかなかった一人に微笑ましさもありました。
Posted by 藍色 at 2009年07月17日 02:03
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